『老後2000万円問題』が話題になった2019年から7年。2026年現在の日本では、老後資金の現実的な目標が夫婦で1億円·独身で5,000万~7,000万に上方修正されている。インフレ年2.5%の環境では、現役時代の貯金がそのままの価値で老後に届かないからだ。本記事では、厚生年金·iDeCo·新NISA·企業型DCの4本立てで30年で1億円を作る具体シナリオと、月積立額·税制·運用利回りを整理する。
日本の老後4本立て
| 制度 | 種別 | 限度額/年 | 節税·特徴 |
|---|---|---|---|
| 厚生年金 | 公的 | 給与の18.3%(本人9.15%+会社9.15%) | 給与天引き·終身受給 |
| iDeCo | 私的(個人型DC) | 14.4~81.6万(職業別) | 掛金全額所得控除 + 運用非課税 + 引出時優遇 |
| 新NISA | 私的(投資) | 360万(成長240+つみたて120) | 運用·引出全部非課税 + 生涯枠1800万 |
| 企業型DC | 私的(企業型) | 月20,000円程度(マッチング次第) | 掛金所得控除 + マッチングで会社が一部負担 |
4本全て活用すると、年収500万会社員モデルで節税効果合算·年3050万円·30年累積で約1,0001,500万円の節税。これだけで老後資金の1割超を国が負担してくれる構造。
30年シミュレーション — 35歳→65歳·月8万積立
35歳スタート·年7%リターン·新NISA·iDeCo·企業型DC配分。
| 制度 | 月積立 | 30年累積(7%) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 厚生年金 | (給与天引き) | 65歳 | 物価連動 |
| iDeCo | 月23,000(年27.6万·会社員モデル) | 約2,800万 | 所得控除約5.5万/年 |
| 新NISA | 月33,000(つみたて投資枠40万/年) | 約4,000万 | 完全非課税 |
| 企業型DC | 月20,000(マッチング想定) | 約2,400万 | 会社マッチング込み |
| 合計(本人積立) | 月76,000 | 約9,200万 | + 厚生年金月14~16万終身 |
30代月8万の自己負担で、65歳時点に約9,200万の自己資産 + 厚生年金月1416万。夫婦合計(共働き)なら2倍に近い資産+年金で1.52億円規模に到達。
厚生年金 — 公的1本目の終身保険
厚生年金は給与天引きの公的年金で、30年加入·平均月収40万モデルで65歳から月14~16万円が終身受給される。物価連動·終身保証という資産運用商品では再現不可能な特徴を持つ。
国民年金(基礎年金)単独受給者と比較すると約2倍の月額受給。サラリーマン·公務員は厚生年金が老後の屋台骨。日本年金機構の『ねんきんネット』で個別シミュレーション可能。
iDeCo·企業型DC — 私的1本目の所得控除
iDeCoの年間限度は職業·企業年金加入状況で変動。
| 職業·状況 | 月限度 | 年限度 |
|---|---|---|
| 自営業·フリーランス | 68,000円 | 81.6万 |
| 会社員(企業年金なし) | 23,000円 | 27.6万 |
| 会社員(DC加入) | 20,000円 | 24.0万 |
| 会社員(DB·DC両方) | 12,000円 | 14.4万 |
| 公務員 | 12,000円 | 14.4万 |
掛金全額が所得控除。年収500万円会社員(限界税率20%)が月23,000円掛けると年間節税約5.5万円。30年で165万円の節税合計。
企業型DCがある場合、会社のマッチング掛金は『無料の給与』に近い性質。可能な限り上限まで活用するのが定石。
新NISA — 私的2本目の生涯非課税枠
新NISA(2024年開始)は年間限度360万·生涯枠1800万の運用非課税·引出非課税の口座。30年で月額に換算すると最大月50,000円(年60万)が標準的な活用水準。
5%リターン30年運用で月33,000円積立=約4,000万円達成可能。長期インデックス投資との組み合わせが運用効率最大。
退職金の取扱い — 一括 vs 分割
5560歳で受け取る退職金1,5002,500万円の運用設計。
| 配分 | 額(2,000万円ベース) | 用途 |
|---|---|---|
| 普通預金·MRF | 400万(20%) | 緊急·医療·短期生活費 |
| 新NISA(株式インデックス長期) | 800万(40%) | 老後の運用源 |
| 個人向け国債(変動10年·物価連動) | 600万(30%) | インフレヘッジ·中期 |
| 個別目的(贈与·特殊購入) | 200万(10%) | 子供·孫·特別目的 |
月10~15万取崩で30年持つ設計。退職金 + 新NISA運用利益 + 厚生年金で老後30年の生活費を支える構造。
日米韓 4本立て比較
| 国 | 公的 | 私的最大 | 投資非課税 | 医療 |
|---|---|---|---|---|
| 🇯🇵 日本 | 厚生年金 | iDeCo + 企業型DC | 新NISA(1800万生涯) | 国民健康保険 |
| 🇰🇷 韓国 | 国民年金 | IRP + 연금저축 (年900万) | ISA(1億累積) | 国民健康保険 |
| 🇺🇸 米国 | Social Security | 401k($23.5K/年) | Roth IRA + HSA | HSA(triple tax-advantage) |
米国401kが単独制度では最大限度額。日本·韓国は『複数制度の合算』で類似規模に到達。3国とも『公的 + 私的 + 投資非課税 + 医療』の4本立てが共通構造。
ツール — 老後シミュレーション
interest ツールに月積立·期間·想定リターンを入力すると、4本立て累積が比較パネルで一覧表示される。35歳·40歳·45歳スタートシナリオを並べて、『何歳から始めると月いくら必要か』を逆算可能。
老後1億円は『月8万 × 30年 × 4本立て分散 + 政府節税 + 厚生年金』の合算結果。30代でスタートすれば月負担は無理ない水準、40代スタートでも月15万円で十分到達可能。最大の敵は『遅すぎるスタート』、最大の節税口座は『まだ埋めていない限度額』。本ツールはシミュレーションするが、30年の時間を作るのは利用者自身。